【医療 × web3】メタバース・VRは医療の分野でどう使われているか
前回の続きです。
まだ読んでない方はこちらから先にどうぞ。
今回はメタバース・VRが医療分野でどのように活用されているのか、海外含めいろんな事例をまとめました。
医療 × メタバース
バーチャルホスピタル
2022年4月、順天堂大学と日本IBMが順天堂大病院のメタバース「順天堂バーチャルホスピタル」を設立しました。
今後3年をかけて、仮想空間であるメタバースを活用した医療サービスのビジネスモデル構築と、事業のためのエコシステム形成を目指すとのこと。
僕がこのシステムが画期的だなと思った点は下記の3つです。
- 患者や家族が入院や治療の内容をあらかじめメタバース上で体験し、知識と理解を深められる
- 予約〜支払いまでメタバース上で可能になる
- 医療従事者の働き方が変わる
メタバースというのは仮想空間なので、ある意味いろんな”お試し”ができます。
治療の練習や患者体験に活用できることは何より革新的だなと思います。
予約〜支払いまで全てがメタバース上で完結するようになれば、医療従事者・患者両方の負担軽減になりますし、僕らの働き方も大きく変わりますね。
参考:順天堂大学、病院のメタバースを使う医療サービスを日本IBMと共同で研究
メタバースでOTC医薬品を身近に
2022年の8月、メタバース上の世界最大のVRイベントに「ロート製薬」が出展しました。
メインは目薬鉄砲のゲームブースなどで、”医療”という感じはありませんが、メタバースを使う層に対してOTC医薬品を身近に感じさせるには有効だなと思いました。
あとはメタバースを使うこと自体が目を酷使するので、マーケティング的に目薬のPRとはすごく相性いいですよね。
参考:ロート製薬がバーチャルマーケット2022 Summerに初出展!
製薬メーカーの職場がメタバースに
アストラゼネカ日本法人が、全国の営業所を廃止してメタバース(バーチャルオフィス)で働く体制に切り替えました。
メタバース上では自分のアバター(分身)を他の人に近づけると会話ができ、個室の会議室もあります。
営業所の方が直接話ができていいのでは?と思いましたが、全国の社員が一堂に会することで、
- 今まで話したことのない人とも情報共有できる
- リアルより名前を覚えやすい
- 医療体制の異なる遠方地域のMRと情報交換することで、気づきやヒントが多い
といったメリットがあるようです。
個人的には、ITを駆使してリアルを超える生産性が発揮される環境には大賛成です。
というか、今後はそれができる人こそが生き残って活躍していく時代になりますね。
国内の製薬企業だと、アステラス製薬が営業所廃止を掲げているそうです。
ちなみにアステラスは、VR・メタバースを活用したデジタル営業のシステム構築も始めています。
参考:
バーチャルMR
上の話と似ていますが、バーチャルMRなるものもあります。
住友ファーマやツムラでは、MRを3Dアバター化して情報提供活動を行っています。
人が直接伝えるメリットもありますが、発信側の労力や受け手側の利便性を考えるとかなり効率的ですね。
巷ではChanGPTが話題ですが、将来的には原稿はChanGPTが作成・情報提供はバーチャルMR、なんて日も来るかもしれません。
そうなれば人間は情報の確認・修正に集中すればいいので、生産性はさらに向上しますね。
住友ファーマでは、パーキンソン病およびレビー小体型認知症においてVRを用いた情報提供活動も行っています。
介助動作をVR上で体験し、患者・医療従事者の共通認識による円滑なコミュニケーションを図ることを目的としているそうです。
参考:
XRの医療応用に関する情報発信およびVRを活用した新たな情報提供活動開始に関するお知らせ
~当社初の動く3DバーチャルMR~ 木村情報技術、ツムラへ医療関係者向け『ツムラ漢方バーチャルMR』の提供を開始
メタバースクリニック
順天堂のバーチャルホスピタルよりはカジュアルな感じですが、美容皮膚科がメタバースクリニックを開院しました。
まだ診察とかではなくダイエットの相談会ですが、これからどんどん発展していくと思います。
参考:
美容皮膚科さくらクリニックが株式会社MEDVERSEとメタバースクリニックを開院
ドバイ・メタバース戦略
海外の事例ですが、ドバイのヘルスケアスタートアップが学校向けにメタバースクリニックを開院しています。
初期段階として、100校に対して試験的に実施するとのこと。
予防に重点を置いたプライマリーヘルスケアを提供するそうです。
子供達はゲームに慣れ親しんだ若い世代なので、ゲーム化されたヘルスケアプラットフォームは違和感なくすぐに適応できるだろうと推測されています。
新しいテクノロジーをすばやく適応できる層に展開し、かつ将来を担う若い世代にプライマリーケアを教育・情報提供していくっていうのはとても素晴らしいですね。
近い将来日本にも同じ流れが来そうです。
参考:
医療でもメタバースの導入進む、「メタバース戦略」を発表したドバイから。プライマリー・ヘルスケアに、フィットネスやメンタルヘルスまで
バーチャル空間で医療手技の学習
イマクリエイト株式会社が新潟大学と共同で、医療現場で必要な手技をバーチャル空間で学習できるシステムを開発しました。
腹部視診、腹部聴診、腹部打診、心電図測定、血液ガス検査、下腿浮腫の検査、血圧測定などをバーチャル空間で体験できるようです。
別の事例ですがHoloeyesという会社の開発したプログラムでは、VRでシュミレーションを行って手術の精度上げることも可能なんだとか。
やはりバーチャル空間の一番のメリットは”お試し”ができることですね。
実習だけでなく、実際の手術の精度を上げたり、選択肢を増やすという意味でもシュミレーションができる意義は大きいと思います。
薬学部の実習でも、薬の体内動態がVRで見れたりするようになると面白いですよね。
参考:
バーチャル空間上で医療現場で必要な手技を学習 イマクリエイトと新潟大学が開発
創薬 × メタバース
中外製薬はアメリカのスタートアップであるナノムと連携して、タンパク質と医薬分子の相互作用をVRの技術で立体的に見られるシステムを導入しています。
今までは平面での表示でしたが、実際に分子の視点になって分子同士の作用を観察できるようになると、化合物を作っていく際にもかなり役立ちそうですよね。
たんぱく質と化合物が結合する箇所を最適な角度から見られるほか、ズームインすれば原子レベルで観察もできるとのこと。
複数人で同時に見ながら情報共有もできそうです。
参考:
製薬会社がメタバースで入社式
直接的な医療での事例ではありませんが、武田薬品工業がメタバースを活用して入社式を開催しました。
同社は2020年頃から普段の会議などでもメタバースを使っているそうです。
製薬会社でのメタバース・VRの活用としては創薬分野が一番肝となっていくでしょうね。
ですが、会議や入社式などそれ以外の分野でも積極的に活用していくことで、テクノロジーの浸透が早まっていくと思います。
参考:
まとめ
ここまでいろんな事例を見てきましたが、メタバース・VRの最大のメリットは、”お試しができること”、”当事者(物)の視点になれること”ですね。
医療の分野と相性もいいので、今後さらに活用されていくでしょう。
次回はシリーズの最後、NFT・仮想通貨編です。
ではまた。