【医療 × web3】ブロックチェーンは医療の分野でどう使われているか
ここ2〜3年で、「仮想通貨」「ブロックチェーン」「web3」などのワードを聞く機会も多くなりましたね。
ただ実際の医療現場などではまだまだ見聞きすることもなく、
「どうせIT業界に限った話でしょ」「医療業界には関係ない」と思っている人も多いでしょう。
この業界はテクノロジーの進化が遅いので、確かにブロックチェーンの技術が浸透していくのには時間がかかるかもしれません。
でも、これらが医療業界に大きな変化をもたらしていくことには間違いありません。
この記事では、ブロックチェーンなどweb3と言われるテクノロジーが、医療に関わる分野でどう利用されているのか、国内・国外問わずいろいろな情報を集めました。
僕らの将来の働き方にも関わると思うので、今のうちにしっかりキャッチアップしていきましょう。
用語のおさらい(web3、ブロックチェーン)
まず最初に、超簡単に用語のおさらいをします。
知っている方は飛ばしてください。
web3
web3とは、インターネットの新しい概念のことです。
web3.0と表記されることも。
web3の概念の中に、「仮想通貨」「NFT」「メタバース」「DAO」「DeFi」「GameFi」「トークン」など新しい技術が含まれているイメージです。
web1:1990年代〜2000年代半ば。情報の閲覧のみ。
web2:2000年代後半〜現在。GAFAなど巨大企業の台頭、SNS等での情報発信が可能に。
web3:2018年頃〜。個人が主体となり、価値を持った情報の所有が可能に。
ブロックチェーン
インターネット上の取引履歴をお互いに鎖(チェーン)のように監視・保存する仕組み。
特徴としては下記の3つがあります。
- 不正や改ざんができない
- 取引履歴が公開されている
- 特定の管理者がいない
ビットコインなどの仮想通貨や、web3を構成する技術は全てブロックチェーンが基盤になっています。
ブロックチェーンでは、特定の管理者がいない=データを全て自分で管理する=プライバシーが保護されるということです。しかも情報の不正や改ざんができません。
勘のいい方はもうお気づきかもしれませんが、この技術、医療の分野とめちゃくちゃ相性いいと思いませんか?
ここからは、分野ごとに実際の活用例を紹介します。
医療 × ブロックチェーン
医薬品デリバリー
2020年から2021年にかけて、「ザイバーエージェント」「MG-DX」「富士通」がブロックチェーンを活用した情報連携プラットフォームの共同実証プロジェクトを実施しています。
目的としては、オンライン服薬指導における安全・確実な医薬品の配送のためです。
実証実験の対象にはOTC医薬品も入っています。
医薬品の配送は渡し間違いや、遅延があってはならない(配送全てそうですが医薬品は特に)ので、関わる人が配送・位置情報などを相互に確認できる仕組みは必須だと思います。
参考:医薬品の安全かつ確実な配送を実現するオンライン服薬指導向け情報連携プラットフォーム構築に向けた共同実証プロジェクトを開始
臨床試験(治験)- ナルコレプシー治療薬
2022年11月、製薬会社アキュリスファーマがナルコレプシー治療薬の治験(フェーズⅢ)を開始しました。この治験にはサスメドが開発した管理システムを導入していて、その中でブロックチェーンの技術が活用されています。
ブロックチェーンの治験管理システムを活用することで、これまで人が行っていた作業が減り、
- 時間とコストの削減
- データの信頼性の担保
- ドラッグラグ・ドラッグロスの解消
に繋がると期待されています。
しかもこのプロジェクトにはもう一社関わっており、それが「Amazon」です。
Amazonは元々クラウドサービス”AWS”を展開しており、その中にブロックチェーンサービス”Amazon Managed Blockchain”があります。
今回の治験管理システムに使われているのがAmazonのブロックチェーンというわけです。
Amazonといえば、日本の処方薬ネット販売に参入すると発表されたのが記憶に新しいですよね。
日本における医薬品の開発から販売まで、上流から下流までシェアを取っていこうと目論んでいるかもしれません。
参考:
医薬品の治験を「ブロックチェーン」で変革、データの信頼性確保と効率化を両立
サスメド、不眠障害治療用アプリの開発と臨床試験システムの社会実装の各々の領域で着実な事業進捗
アマゾン ウェブ サービスなど,ブロックチェーンを用いた治験モニタリングでドラッグラグ,ドラッグロスの解消をめざす
臨床研究- 神経疾患領域
上記の治験とは異なりますが、順天堂大学が行う臨床研究の電子症例報告システムにハッシュピーク株式会社が開発したブロックチェーンネットワークが使われています。
詳しい研究内容について知りたい方はこちらの記事を読んでください。
今回電子症例報告システムにブロックブロックチェーンを活用することで、
- データの改ざんができない
- 研究手順の遵守
- 臨床データのNFT化
上記の3つを実現しています。
NFT化された臨床データは公開・交換されることはないとされていますが、将来の二次利用の可能性はあるそうです。
臨床データといえば大事な話をもう一つ。
海外では受けられる医療の格差が大きい(日本は国民皆保険制度もあって海外と比べて手厚い)ことが問題となっています。
しかしブロックチェーンの技術を活用して臨床データなどを患者自身が管理・所有することで、そのデータを元手に無料で医療を受けられるようになると期待されています。
患者の臨床データや健康情報は医療機関・研究機関・保険会社などいろいろな企業がお金を出してでも欲しい情報ですからね。
参考:
ハッシュピーク株式会社がイーサリアム(Ethereum)を使ったEDCシステムを開発し、順天堂大学医学部附属順天堂医院の臨床研究を支援
暗号資産ビットコインの仕組みで作る「誰にでも平等なヘルスケア」とは
医療大麻の栽培管理
医療大麻の栽培管理に、シンボル(XYM)のブロックチェーンが使われている例です。
ブロックチェーンで大麻の産地証明を行うことで、違法栽培等との差別化を図り、品質管理・品質証明も行なっていくようです。
冒頭にも挙げましたがブロックチェーンの特徴は
- 不正や改ざんができない
- 取引履歴が公開されている
- 特定の管理者がいない
なので、医療大麻など厳重な管理が必要な薬物にはぴったりですね。
既得権益や利権も発生しにくくなると思います。
参考:
医療大麻の栽培管理にシンボル(XYM)活用、サイアムレイワが岐阜大学と実証開始
薬局間の在庫管理
実証実験が2018年と割と先進的ですが、北海道札幌市の医薬品卸とその調剤薬局グループ会社がデッドストック医薬品の店舗間売買にブロックチェーンを活用しています。
システム内で独自の仮想通貨を使っているのも面白いですね。
現在の活用状況など、情報追え次第またシェアします。
参考:
ブロックチェーンを活用した医薬品のデッドストック販売プラットフォーム
医薬品の流通経路と在庫を可視化
2023年4月から日本IBMが、製薬企業・医薬品卸・物流会社と手を組んで、ブロックチェーンを活用した医薬品の流通経路と在庫の可視化システムの運用検証を開始します。
今回の実証実験では、医薬品の工場出荷〜医療機関での調剤・投薬の一連の流れをシステム上で検証するようです。
昨今は医薬品の品質や流通が大きな問題になっていますよね。
流通経路と在庫を可視化することで、医薬品の安定供給や偏在庫の解消を目的としています。
参考:
医薬品の流通経路と在庫をブロックチェーンで可視化、製薬企業と日本IBMが運用検証を開始
ちょっと記事がだいぶ長くなりそうなので、ここまでとします。
今回はブロックチェーン編でした。
次回はメタバース編です。