【医療 × web3】NFT・仮想通貨は医療の分野でどう使われているか
前回に引き続き、医療 × web3 シリーズの第3弾を書きました。
まだ読んでない方は先にこちらからどうぞ。
メタバース・VRの記事はこちらです。
今回は、NFT・仮想通貨について、医療の分野におけるいろんな事例を集めました。
NFTについては、どんなものかといった解説はここでは省略します。(ネット上に専門家の記事もたくさんあるので。)
一言で言うと、非代替性のデジタルデータです。
今までのデジタルデータは代替性(コピーして量産が可能、区別不可)がありましたが、ブロックチェーンの技術によってそれぞれのデジタルデータに固有の情報や価値を証明できるようになりました。
では早速事例を見ていきましょう。
医療 × NFT
NFT処方箋
医療健康領域でのブロックチェーン浸透を図るMINE株式会社が、2022年4月~2022年7月にGENie株式会社、セントラル薬局グループ、東京白金台クリニックと共同でブロックチェーン技術のNFTを活用した処方箋の実証実験を行いました。
今は電子処方箋やオンライン服薬指導が行われているので、そこにNFTの技術を上乗せした形です。
具体的には、医師や薬剤師の資格証明書をNFT処方箋に付与しています。
そうすることで、処方箋の発行者、保有者、利用者が誰なのか明確になり、従来の処方箋と同等以上の管理ができるようになっています。
またブロックチェーンの技術を活用することで、医師や薬剤師が作成した医療健康情報を患者自身で保有・管理ができます。
そして既往歴、服薬歴、検査値などの情報を、患者をハブとして各社が直接情報確認できるようになります。
現状医療情報は、各社でアクセスできる領域も異なっていて十分に環境整備されてるとは言えないですよね。
NFT処方箋は個人情報保護にも対応しつつ、情報の移動を便利にする仕組みとして非常に良いと思います。
参考:
仮想通貨だけじゃない!DX、処方箋、デジタル証券、進化するブロックチェーンの3つの活用事例
医療・健康データをNFT化
2022年、ヒューマンズデータ株式会社は医療福祉クラウド協会、ラブロック株式会社と連携して健康データのNFT化の実証実験を行いました。
具体的な実験内容は下記です。
- 実験に同意した被験者10名がアプリケーションを通じて健康データを入力
- 入力された健康データが1日1回NFT化され、ブロックチェーンに登録される
- 健康NFT1件あたり1ポイントとして、仮に設定したポイント同等物との取引を実施
実験の結果は下記です。
- 合計90件のNFTが生成され、ポイント取引が確実に行われた
- 万が一データが改ざんされても、その検知ができることを証明した
- 医療データをNFTとして技術的に取り扱えることを証明した
個人的には、こういった仕組みが将来的な医療において一番期待されている部分かなと思っています。
日本は収入関係なく社会保障が手厚いですが、世界的には国民皆保険制度がない国もあります。
低所得者層は医療を受けられない、受けられたとしても医療の質に差があるなど問題も多いです。
患者の健康・医療データを患者自身が管理するようになることで、そのデータを元手に無料で医療を受けられるようになると期待されています。
患者の臨床データや健康情報は医療機関・研究機関・保険会社などいろいろな企業がお金を出してでも欲しい情報ですからね。
参考:
ヒューマンズデータ、医療福祉クラウド協会とともに健診データのNFT化によるスマートコントラクトの実証実験を実施。健康データの安全な利活用を目指す
暗号資産ビットコインの仕組みで作る「誰にでも平等なヘルスケア」とは
メタバースとヘルスケア~無限の可能性を秘めたウェブ3.0で、医療に革命を起こす
薬局の内定通知書をNFTで発行
東京で在宅薬局を運営する「まんまる薬局」が、2022年の内定通知書をNFTで発行しました。
国内では初の事例だそうです。
日本の医療業界はテクノロジーの進歩がとても遅いので、とにかく新しい技術を取り入れてみるという姿勢が素晴らしいと思います。
参考:
乾癬の啓発プロジェクトとしてNFTアートを活用
2023年1月、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社が、NFTを活用した膿疱性乾癬の啓発プロジェクトを始動しました。
プロジェクトの内容としては、希望する参加者がWEBサイト上でランタンを灯し、参加者のコメントや参加時間などの情報を集約しNFTの形として、永久的に保存していくそうです。
ランタンが表現する灯りや影は、患者が抱える辛さや悩みを元に制作されており、患者一人ひとりの未来まで明るく照らし出したいという想いが込められています。
NFTを活用した啓発活動がどれほど効果的なのかはこれから検証が必要ですが、業界的にも、世界が注目するテクノロジーを積極的に活用していく意義はあると思います。
僕もいち医療従事者ですが、一般の方では乾癬自体の理解もあまりないのが現状ですからね。
自分がかかって初めてこの病気を知ったという人も多いです。
参考:
世界初*のNFTアートを活用した膿疱性乾癬啓発プロジェクト「Illuminate Tomorrow」始動
医療 × 仮想通貨
美容整形クリニックの支払いに利用
湘南美容クリニックの支払いにビットコインが利用できていました(2021.10.19に確認)
https://twitter.com/yuuyuujiteki436/status/1450402207522643974
ただ現在は利用停止中のようです。(2023.5.17)
大手取引所の倒産などもあって、仮想通貨の価値が不安定なのも理由かもしれません。
保険医療は税金なので難しいですが、自由診療であれば今後も使えるところが出てくるでしょう。
医療系ではないですが、実店舗では「ビックカメラ」や「ゆきざき」で仮想通貨支払いができることで有名です。
参考:
医科大学の学費支払いに利用
海外の事例ですが、ドバイのガルフ・メディカルという私立医学大学の学費の支払いに仮想通貨が利用されています。
ドバイは世界的にも技術革新を推進している国として有名です。
上記の大学では、研究室をメタバース上に構築しており、入学希望者が見学することも可能。
学生は自分のアバターを作成し、バーチャル上で勉強するそうです。
バーチャル患者や3Dラボのシュミレーションを通じて医療訓練をし、手技を学んでいます。アバターを通じて、教授や他の学生と交流も行っているそう。
参考:
医療でもメタバースの導入進む、「メタバース戦略」を発表したドバイから。プライマリー・ヘルスケアに、フィットネスやメンタルヘルスまで
医療物資の購入に活用
ウクライナの事例ですが、医薬品や救急車の購入に仮想通貨が使われています。
ロシアのウクライナ侵攻後、ウクライナには色々な国から支援が寄せられました。
その中の一つが仮想通貨です。
法定通貨の寄付も行われていますが、銀行経由の送金だと審査が厳しく完了しないこともあるそう。
あと国を跨いで法定通貨を送金する場合、何種類もの手数料がかかったり、送金自体にかなりの時間を要す場合が多いですよね。
それが仮想通貨であれば手数料を抑えられますし、法定通貨ほど送金に時間もかかりません。
仮想通貨で迅速に支援を行い、ウクライナ側が必要に応じて医療物資の購入に使っています。
それらを購入する際も、基本的には海外から物資を買っているので、ウクライナから国外への送金もしやすくなっています。(厳格に管理されている武器の購入には使えない、仮想通貨での支払いを断る業者などの問題点もあるそうですが)
別の話ですが、最近では国を跨いでフリーランスが仕事を受注することも多く、その利便性から報酬の支払いに仮想通貨が使われることも増えてきているようです。
- 国境に関係なく迅速に送金可能
- 手数料が抑えられる
- ブロックチェーンで動きが管理されている
価値の不安定さなどの問題もありますが、これらの条件を兼ね備えた仮想通貨の可能性はまだまだ大きいと思います。
参考:
ウクライナ、180億円超の暗号資産寄付の使い道──暗号資産が使えないケースも
終わりに
自分の勉強用として作った記事ですが、このシリーズが意外と好評で、みなさんの関心度の高さが垣間見えました。
医療 × web3のシリーズは、今回で一旦終了とします。
情報が溜まってきたら不定期で更新はするので、ぜひブックマークをお願いします。
以上です。